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2009年の旅行記
2009年11月06日
今から十年前。私が学生時代の話です。
貧乏学生だった私が深夜のアルバイトで少しずつお金を貯め、ようやくの思いで一台のカメラを購入しました。当時、流行り始めのデジカメや、最先端のオートフォーカス一眼レフカメラには目もくれず、“全て自分の技術による撮影”というキャッチフレーズに魅力を感じ、完全マニュアル型の一眼レフカメラを購入しました。
私は新しく購入したカメラを手に、能登一周旅行に出かけました。そして写真を沢山撮りました。初めて完全マニュアル型のカメラで撮った写真は、八割がピンボケで、見るだけで素人が撮影したと分かる写真ばかりでした。時々ピントが合った写真は、被写体の構成もなっておらず、写真といえるものはほとんどありませんでした。
しかし、その中で一枚。どうしても気になる一枚がありました。
唯一写真らしい写真・・・。靴の写真です。
千里浜の海岸で撮った一枚。一見するとただの砂浜に置かれた靴の写真。ただこの写真は私にとって特別なものでした。いや、特別になったと言ったほうが良いのかもしれません。
実はこの能登一周旅行。当時のガールフレンドを連れて行きました。その時一緒に旅行したガールフレンドは、現在私と結婚し、私の最も近くに居る女性となりました。そして今は、その彼女との間に二人の子供がいます。
あの時撮った、彼女の靴の写真。その写真を見ると、青春時代の自分と、彼女を思い出します。そして十年経った現在、あの時全く想像することの出来なかった“すばらしく幸せな自分”が今ここに居ます。
今は能登より遠方に住まいを移していますが、いつかきっと、今度は二人分の子供の靴も隣に並べて、同じカメラで、同じ場所、同じ写真を撮りにいきたいです。
その時は、今までの十年。そしてこれからの十年を想像しながら・・・。
群馬県 ペンネーム ぱたぐれ様
【事務局評】
一枚の写真が10年前の「時」や「気持ち」を記録してくれているのですね。
どうぞまた「靴」の写真を撮りにきてください。
きっとその写真は、奥様やお子さんにとっても“特別な一枚”になることと思います。